ファイアーエムブレム エンゲージ 感想

発売日からぶっつづけで2周(DLCありハード・DLCなしルナティック)、合計240時間ほど遊んでようやく一息つきました。
今日DLC第3弾が来ちゃったのですぐ3周目始めるんですけどね!

結論としてとても楽しいゲームでした。

去年の秋口に初報を見た時は「ヒーローズの亜種かな」「ポケモンみたいなキャラモデルの質感?でポップ方面を押し出していくのかな」と風花雪月とのあまりの対極っぷりに「見」に回っていた部分があったのですが…。

「指輪の力の使い方」のPVが出たあたりから、if暗夜で一つの極地に達した感のあった"濃い"SRPGのゲーム体験を、その後のヒーローズなどで培った部分もミックスして、今回コンソールでガッツリ遊べるゲームとして作っているなという期待感が強まっていきました。

■戦闘・育成・紋章士

いざ遊んでみると、ゲームの核たる「戦闘・育成・紋章士」がとにかくものすごく楽しい。軸となるこの部分がすごく作り込まれているので、他の些細な欠点が欠点としてあまり気にならないです。

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従来の能力値・兵種・スキルのシステムをベースにしながら、そこに紋章士とのシンクロ・エンゲージの要素を掛け合わせたことで、各プレイヤーの好き好きでゲーム的な強さ・キャラクターフレーバーの組み合わせを楽しむことができ、「自分ならではの体験」をしていると強く感じられます。

紋章士の要素は基本的に派手に強さが表現されており、プレイヤーがコントローラーを動かしたことに対するゲーム上の作用がわかりやすいです。これは「開発者に訊きました」でも強く語られていましたが、確かにここまで直感的に目立つ要素があればゲーム慣れしてない人にもすぐに伝わるんでしょう。
聖戦の系譜の原作でもシグルドが14マス移動してオーバードライブで一列に並んだ敵を一掃してた気がする。

そしてその派手な強さに対してなおやりごたえを用意するために、各マップのレベルデザインも徹底されています。マップごとにギミックの手を変え品を変え飽きが来ないようにしつつ、プレイヤー側があまりに一方的に優位に立ちづらいように(ただしちゃんと工夫すればエンゲージで気持ちよく解決できるように)なっています。
シナリオ的にもゲームの難しさとしても、敵が紋章士を使う時のインパクトもある程度際立っていて、紋章士の重要性の後押しにもなっていてアクセントとして良いなと思いました。

■散策・ソラネル
3D空間をプレイヤーキャラクターが歩き回ること自体は以前から可能でしたが(ifのマイキャッスルで擬似的に、エコーズのダンジョンから本格的に)、戦闘後の戦場を歩き回るという新しい試みが少し新鮮でした。

シナリオパートに入れられないキャラクター・セリフをここにコンパクトに散りばめることで、風花雪月の散策パートほどのボリュームはないものの、ゲームのテンポをあまり損なわずに舞台説明などを補完してくれています。「ここの土地は何をつくって生活してるのか」「この橋はどういう曰くがあるのか」みたいな小話を入れてきたり。
遊牧民のテントの中など、戦闘中の俯瞰視点では見られないものも見ることができるのも良かったです。

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ソラネルはifのマイキャッスルを遊びやすく再構築したものと受け止めています。
ポップで緩い雰囲気の息抜きの場として、様々なアクティビティ・ミニゲームを楽しめるのはまんまマイキャッスルですね。風花雪月の大修道院にもそういう要素もいくつかありましたが、雰囲気としてはやはりifです。
筋肉体操を除いてゲーム的な報酬の要素は薄く(ないわけではないですが)、暇な時にいっぱい遊んでもいいし、全くやらなくてもゲーム的に困ることはないのも良い塩梅だったのではないでしょうか。ここらへんの「無理にやらなくてもいいことに大した報酬を設置しない」のはバトルの場面でのボーナス報酬にも共通してる気がします。

ちなみに自分はソラネルの釣りにすごくやりごたえを感じてしまい、リアルの空き時間があった時は巨大な魚と何度も格闘していました。

■グラフィック
キャラクターのモデル・フェイシャル・モーションの進化が著しく、見ているだけでとても楽しいです。キャラの表情にあわせて瞳の中でもアニメーション変化しているのは変態の領域なのでは。

シナリオパートの身振り手振り・表情、戦闘パートの戦闘モーションともに、雰囲気を損なわない範囲でケレン味を効かせたものになっており、見ごたえがあります。

戦闘モーションは兵種ごとに多様な種類がありながらも一つ一つ動きがかっこよく、更に戦闘中に柵などの衝突したオブジェクトがリアルタイムで壊れたり、階段の段差に合わせてキャラクターが足を踏み変えているなど、細かいところまでクオリティに気を使っていることが感じられて嬉しかったです。

必殺モーションなんかは「GBA時代からのケレン味を引き継いでいる」って褒める人もちらほらいますね。ifの頃の3Dアニメも同じような風味はあったんですが、いかんせん3DS時代はキャラモデルの都合で頭身が低かったので…。頭身の上がった環境でしっかり魅せてくれています。

背景グラフィックは圧倒的な美麗さ、という点が強調されていたわけではないと思いますが、トゥーンシェードなキャラクターグラフィックに合わせて雰囲気を損なうことなく、かつ様々なロケーションに合わせた表現ができていたと思います。

■ストーリー

ストーリーは発売前のPVでわかっていた通り、風花雪月とは真逆でポップなものでした。
なるべく多くの人々に受け入れられるものをつくるためか、紋章士とのエンゲージを含め、子供向けのアニメや特撮作品(いわゆるニチアサ)を意識したと思われるような要素が多かったです(といっても自分がそういう作品をちゃんと見ているわけではないので、この感想も不適切ではあるんですが)。
歴代の主人公格の人物を何人も登場させるお祭り的な企画である時点でポップな作風であることはわかっていたので、自分はこういう作品があっても良いと割と前向きです。事前に言われてれば精神のチューニングはできるので…。

個人的には風花雪月のようなハード寄り・戦記寄りの話のほうが好きなんですが、今作のストーリーは(特に序盤で)表面的にポップに振り切ってはいるものの、中盤以降のストーリーは古典的ながらも盛り上げるべきところでちゃんと盛り上げてくれる構造になっており、それがラストまで途切れることがなかったです。
「何に生まれるかではなく、何を成すかが大事だ」という子供にもわかりやすいメッセージをテーマに、主人公サイドにも敵サイドにも家族の要素を(良き家族も破綻してる家族も)各所に散りばめながら、強く印象に残るエピソードを多く配置できています。

ストーリーの本筋ではありませんが、支援会話から微かに仄めかされたり仲間手帖で開示される情報や各アクセサリーのフレーバーテキスト等からも、人物や文化の設定を作り込みながらもあまり見せびらかすことはせず、クドくならない範囲で語り切ることができていたと感じます。

サウンド
期待されるレベルに対して十分以上のものが揃っていたと感じます。FEの音響は毎回好き。戦闘前のシナリオパートで音楽が演出に合わせてシームレスに切り替わったりとか「すごく上手いな」っていう部分もありました。

戦闘シーンでは各地方ごとのテーマを決めてアレンジ曲を用意するという手法が採られています。ストーリーマップで同じ地方での戦闘が続いている間は同じテーマの曲(さりげなく前半の章と後半の章とで2バージョン作っている)を聴くことができ、各戦闘マップごとの地域性を感じることができたのは印象的でした。ボス戦や山場の戦闘などでは特異な曲もあり、飽きがこなかったですね。

また各紋章士の外伝で流れる歴代アレンジ曲が現代に相応しいクオリティで戦闘曲として再構築されており、これもどれも聴きごたえがあってよかった。

少し意外だったのが、敵ターン中専用のBGMが設定(というか復活)されたことでしょうか。
覚醒以来ずっと(外伝のリメイクであるエコーズは別として)自ターン敵ターンで戦闘マップのBGMは共通させて、戦闘時と非戦闘時でバージョン違いの曲をシームレスに切り替える…という手法をとっていて、戦闘への没入感が深まっていました。

本作では自ターン時の華やかなBGMが戦闘に合わせてシームレスに切り替わる部分は継続しながらも、敵ターンになると一転して緊張感のある別BGMに切り替わるクラシックなスタイルに回帰しています。
シリーズに慣れてない人が遊んだ時に、自ターンと敵ターンで音楽も区別をつけた方がよりわかりやすいっていう判断なのかな?

あと地味なところではありますが、SEがいちいち気持ちいいんですよね。戦闘時の各メニュー操作を決定する時の「ギン!」みたいな音とか、戦闘演出時にキャラクターが攻撃を回避しつつカウンターするときの「ギャキキィ!」みたいな音もとても気持ちよかったのが非常に印象に残ってます。

■UI・UX
概ね問題ないんですが、ソラネルでの育成で頻繁に利用する紋章士の間・鍛錬の間についてはちょっと使いにくい点が印象に残ってしまったので、発売直後のアンケートメールにも要望込みでできれば修正してほしいなって書いてしまいました。
各部屋で実行できる行動がそれぞれ独立しているんですが、紋章士の間と鍛錬の間を移動するためにロードを挟まなければならず、これが不便でした。
プレイヤーの行動としては片方の部屋での行動だけで済むことはあまりなく、鍛錬の間でレベルや紋章士との絆レベルを上げた後に紋章士の間でスキルを継承したり、継承に必要なSPを確認した後に絆レベルを上げにいったり、といった行動を何度も行き来することが多いです。なのでどちらの部屋でももう片方の部屋に割り当てられた行動へもアクセス可能にしてほしかったですね。
(鍛錬の間で戦闘するために背景データなどを読み込む都合があるでしょうから、そう簡単なことではないんでしょうけど)
アップデートでどうにかうまいこと解決してくれると嬉しい部分です。

ソラネルの施設「鍛錬の間」でも「スキル継承」を行えるようになりました。

なんて書いてたらこの記事を書いてる今日のアプデで追加されてました。やったぜ。

あとスキルを継承したときに、スキルの空き枠があっても自動で装着してくれないのは謎(風花雪月ではついてくれてたのに)。

不満とかではなく良いなと思ったのが、仲間メニューや戦闘中のメニュー操作時とかにキャラクターの3Dモデルがぐりぐり動きながら表示されるところですね。
今まで2Dの立ち絵だけでやっていたところが3Dになって動くようになったので「あっここ動いててもいいんだ」「むしろこれ一度体験しちゃったら今後動かないやつに戻ったときに違和感すごそう」みたいな驚きがありました。
戦闘中の会話イベント時に表示されるキャラの顔も静止画ではなく動く3Dモデルになったことで、セリフと連動して表情が変化する様を眺めることができ、演出面が強化されています。

2章の訓練で殺意マシマシの母様いいよね

■まとめ

全く欠点がないわけではないですが、最初の方に書いた通りゲームの根幹たる部分がとても楽しく遊べるように作り込まれているので、遊びの面白さで吹き飛ばせています。
自分の直感的な尺度では(気に入ったゲームに対してはだいたい甘いんですが)90点〜95点くらいの評価をしています。
風花雪月とは雰囲気が違うよ!ということはわかっておく必要がありますが、歴戦のエムブレマーにも、シリーズに触れたことのない人にもお勧めできるゲームです。

わざわざこういう初心者向けのPVをつくってるあたり、任天堂も新たな消費者の開拓にできる限りのことをやろうと力を入れてることがわかります。
全部のPV合わせたら、実質FE単独ダイレクトやってるくらいの長尺の動画になってるんじゃないでしょうか。
ニッチなジャンルの商売であることは作っている人たちが痛いほどわかっているでしょうから、本作のような試みも含めて、IPの力を増進しつづけるためにあらゆる施策に取り組んでいただきたいです。