始祖ラグンヒルド(後編)

大平原の動乱

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900年12月、ハンガリー王アールパードが死に、その子リヌチカが王位を継承した。
リヌチカも凡庸な人物ではなかったが、王子達の間で王領地が分割された上で相続された結果、新たな王の兵力・財力は父の代より削がれ、また彼の次の後継者となる子も娘が1人のみという不安定な状況であった。
一方で先王アールパードの娘の1人であるイルディコーは長子フラニの妻としてラグンヒルドの手中にあり、仮にいまリヌチカに「不幸」があれば、ラグンヒルドはイルディコーを女王として据えることも狙える立場にあった。


長子フラニの妻イルディコーはアールパード王の娘であるため、ハンガリー王国への強い請求権を持つ

「イルディコー様にはご懐妊の兆しはまだ見られません」
密偵長の報告を聞いたラグンヒルドは表情を変えずに応える。
「夫婦であればいずれ授かるものだろう。いずれ産まれればそれでよい。……それよりも」


同性愛での愛人関係が明らかになり評価ダダ下がりのリヌチカ王。陰謀への加担者があまりに容易に集まるのでプレイヤーによる暗殺の標的になってしまう

「リヌチカ王は醜聞が…男色の噂が絶えないようで、宮廷内での綻びはすぐに見つかりました。王妃を我らの手先に転がすことも容易いかと思われます」
「よろしい。ではそのように手配せよ」
「仰せのままに」
密偵長は礼をして部屋を出る。
ラグンヒルドは窓の外に広がる雪景色を見つめながら心の中で呟いた。
「我らの血を引く王がこの地を統べる未来が来るぞ、フローリク」

この計画は一度は毒見役により防がれるも、その後の2度目の計画で王は毒入りの葡萄酒を呷ると意識を失い、そのまま死亡した。
王の死を望んだ者達の企みを知る者は他におらず、この事件はそのまま闇に葬られた…かに思われた。

ハンガリー王位はリヌチカの死の直前に生まれていた乳飲み子のボルディザールに継承されるが、程なくして傘下諸侯の要求によりリヌチカの別の妹、イルディコーの姉にあたるカミラに譲位される。

王国内で突出した軍事力を持つようになったラグンヒルドは他の諸侯には同調せず、「フラニの妻イルディコーこそ王たるべし」と彼女への譲位を求め反乱を起こした。

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王とはいえ僅かな兵力しか持たぬカミラには抗う術もなく、ヴィシェグラードの砦を打ち破ったノルド戦士達により捕らえられた。
905年4月、こうして王冠はラグンヒルドの望み通りイルディコーの頭上へと移った。


宮廷で玉座に座る新たな女王イルディコーと、その隣に王配として座るフラニ

即位の儀式を済ませた後、イルディコーは2人きりで対面したラグンヒルドに問いかけられる。
「あなたはこの国の女王であらせられます。この意味が分かりますね?」
「……」
「フラニとの間に世継ぎをお産みなさい。それがあなたの勤めです」

イルディコーは謗りを込めて義理の母に言葉をぶつける。

「兄を殺めたのが誰であれ、私に選択の余地はないのですね」


子孫への教育などでストレスが溜まり、メンタルブレイクイベントで懺悔癖がついてしまったラグンヒルド。自らリヌチカ王を毒殺したことを明かしてしまう。人に好かれる正直な性格が仇となることもある…。

ラグンヒルドはほんの一瞬だけ表情を変えるも、すぐに義理の娘に言葉を返す。冷ややかな視線と共に。

「そうです。あなたはアールパード王の娘であり、王となる資格を持つ者。なればこそ、ラウマリキの名において王位をあなたの手に簒奪したのです」
「……私はあなたの傀儡ですか」
「そう思って頂いて結構です。ただし、王と国に仇なすものは私が全て討ち果たします。この国を守り、我が家名を轟かせることが私の役目。あなたには王としての役目を果たしてもらいます」


女王へ即位させたことで獲得したイルディコーからのhookを利用し、リヌチカ殺害の罪の恩赦を強要する

力を持たない若き女王に選択肢はなかった。
弱肉強食の世界を謳歌する義母を蔑むイルディコーだが、その無法者に頼らなければ王国を維持できないことを、彼女はそのわずか数年後に痛感することとなる。

 

王国の守護者

 


先の王たちと同様に、王領地が極端に少ないため動員兵力が1500足らずしかないハンガリー王に対し、周辺国のキリスト教勢力がそれぞれ別方向から侵入してきた。その合計した数はおよそ8500に達した

907年6月より、ハンガリー王国は周囲のキリスト教3カ国より相次いで宗教に根ざす侵略を受ける。
北東のモルダヴィア王によるトランシルヴァニアへの聖戦、同じくトランシルヴァニアを標的とした南東のワラキア王国内のブティ伯からの聖戦、そして北西のモラヴィア王国内のボルショド伯からニトラへの聖戦である。

王国の将軍に任じられていたラグンヒルドは女王イルディコーへ軍資金を提供するとともに、自身も自領の全ての兵の動員とあわせて傭兵をかき集め、ヴァイキング活動で築き上げた富と力を結集して3ヵ国の軍勢との戦いに参戦した。

 

カルパチア北東部のビステルスの戦い。軍事ライフスタイルのGallantパークツリーの強化を続けたラグンヒルドの指揮能力は脅威の39で戦闘優位補正+10~+20が当り前に。戦闘優位は+1あたりダメージボーナスが+2%されるので、+27は+54%のダメージボーナスということになる。この戦闘全般の補正に加えて、Strategistツリーのパークで各MaAの個別の強化も加えられている


ワラキアのラドワヌにおけるブティ伯軍との戦いでは数での優位がとれないながらも、ノルド戦士達の奮闘で圧倒的なキルレシオを叩き出す。12人の戦士のキルスコアが凄まじい

ラグンヒルドは鍛え抜いたノルドの重歩兵軍団を含む約5000の兵を率いて出陣した。カルパチア山脈北東部のビステルスでモルダヴィア軍を撃滅すると、南のワラキアに転進、ドナウ左岸のラドワヌでブティ伯軍を捕捉しこれも打ち破る。
この時点で残る最後の一群たるモルダヴィアのボルショド伯がヴィシェグラードへ侵入し王城を包囲せんとしていた。これを知ったラグンヒルドは、急いで舟を調達すると戦士たちに鞭打ってワラキアから一挙に川を遡り、王都へ駆け戻った。


ブティ伯軍との戦いからそのままドナウ川を遡上、王城を包囲せんとしていたボルショド伯を急襲する

ラグンヒルドが誇る軍団も相次ぐ連戦と補給を無視した行軍でかなりの損耗が発生するが、ラグンヒルドは予備に温存していた傭兵を投入する。ノルド人の急襲を予期していなかったボルショド伯軍は総崩れとなって、散り散りに退いていった。
こうしてハンガリー王国はその内に抱える怪物の獅子奮迅の活躍によって、全ての侵略者を撃退せしめた。
ラグンヒルドと彼女の軍団にとって、ノルド人の水上交通能力を活かしてドナウ川を駆けられるパンノニアは己が家の庭のようなものだった。

 

ハンガリーへの侵略を全て跳ね除けてから5年後の915年8月、ラグンヒルドは老衰により64歳で亡くなった。彼女がこの地に足を踏み入れてからおよそ30年が経とうとしていた頃であった。

彼女は死ぬ直前まで船団を率いて遠征し、地中海に赴いた際はローマをも劫略してショモジに富をもたらし続けた。
彼女が築いたノルド人の勢力基盤はパンノニア北西部に残り、長男である王配フラニはラグンヒルドの跡を継ぎ、ショモジのヤルルとして女王イルディコーの治世を支えることになる。

ショモジには母を偲んだルーン石碑がフラニによって刻まれている。
「ラグンヒルドの子フラニがこの石を彼女と彼女と共に戦った戦士達のために建立する。彼らは神々の加護のもと侵略者を打ち破った。彼らの魂を救い給え」

 

王配フラニへ続く